賛否両論あった東京オリンピック・パラピンピックの最終日、茶の湯教室の友人のSNS投稿を見てある衝撃を受けた。それは、同時並行的に行なわれていたパビリオン・トウキョウ2020で展示されてる茶室「五庵」(建築家藤森照信作)の見学の最終日で、茶室「五庵」の素晴らしさに感動したSNSの投稿内容だった。
数年前に、茶道に興味を持ち、茶の湯の世界を垣間見たくて茶の湯教室の門を叩いた。
コロナ禍の中、リアルなお稽古ができなく、モヤモヤしてる気持ちを突き破った茶室「五庵」の体験レポートに刺激をうけ、観なくては!・・・衝動にかられた。
気がついたら、予約券受付のワタリウム美術館に並んでました。なんと見学の最終組に滑り込みセーフで、安堵いたしました。
夕方の最終組の見学時間まで、7時間、近くの外苑と夕方からパラリンピックの閉会式が行われる新国立競技場周辺を散策して時間を潰した。閉会式に要人が参列する影響で、警備が厳しく車規制が行なわれていた。
夕闇迫る頃、「五庵」の周りには数人見学者が並んでいた。
目の前には、新国立競技場が閉会式を前に、夜空に向かって光を放っており、茶室「五庵」への見学する気持ちが高ぶり、ワクワクドキドキでした。
「五庵」の周りは芝(競馬場で使われていると同じ)で覆われており、建築家・藤森照信氏の自然と一体となった建築を作り続けてるスタイルが見て取れた。
通常の茶室の「躙り口」(にじりぐち)に当たる「まるい入口」から入ると、暗い待合室があった。
その片隅に「梯子」が垂直に立てかけており、登って行く。普通の大人がやっと通れる大きさで、足腰の弱い方にはかなりキツイ「梯子」であった。
梯子を登り、2階に上がると、別世界の茶室が開けていた。
パラリンピックの閉会式を待つ隈研吾氏設計の「新国立競技場」が眼前にあった。
まるで異空間の世界が広がっていた。
この感動はなんだろう。
伝統的な茶室の緊張感はなく、4畳半という狭い空間が開放感に変わり、時間が経つのを忘れてしまった。
建築家・藤森照信氏のマジックに放浪させられてしまった。
「梯子は「にじり口」の再解釈で、暗くて狭い場所を通り、茶室という別世界に移動させる機能を持ちます」(藤森照信)
”私は高いのが好きなんです。茶室自体が周りからよく見え、そこからさらに競技場を見る。お茶室っていうのは別世界性が必要なんですよ。地上にあるより、やっぱり高さが必要で、高いところに登って、狭くて暗いにじり口から上がっていくと、景色が違って見える。この効果は茶室ならではのものです。(藤森照信)”
藤森照信は、日本を代表する建築史家であるとともに、45歳で建築家としてデビューした異色の存在です。
従って、過去の具体的な建築モチーフは引用しない点が特徴だが、今回はフリースタイルの茶室をビルディングしたという。
天井には、和紙で作られた灯は5輪の色合いで、柔らかく照らし、外からの見た「五庵」は、灯ろうのように見えました。
天井の光は、5輪の色合いで柔らかく照らし、心が和む。
2階の茶室から見える国立競技場が素晴らしく感動的なビューでした。
信州の山から伐り出した栗の厚板を何枚もつなぎ、節や割れや歪みを積極的に生かして、自然の木の持つ野性味を表立たせる。(藤森照信氏)
テーブルに穴をあけて「炉」を入れ、水盤を入れて花を活ける。
ここでは、お茶を点てることはできないが、400年前の千利休の茶室の建立の精神は垣間見れた。
これぞ「今のおもてなし」の真髄に触れた瞬間であった。
・千利休作とされる「待庵」(京都府、国宝)のような正統派の茶室を見せるという考え方は新 鮮ではない。
・海外の人々へ見せる正統派の茶室は「これが日本だ」と感じて、皆、そこで思考が止まる。フジヤマ・ゲイシャと同じレベルになってしまう。
・伝統的な日本文化というよりも、「今」の日本文化を見せたいということ
・茶室の「おもてなし」を見て欲しい。
・隅健吾氏もその地域の自然素材を使って、空調に頼らないような生活のこと。即ち「つるつるぴかぴかの都市にする」というのは今、古くさく見えると指摘してる
茶室「五庵」は、会期が過ぎれば消滅してしまう運命。その茶室をタッチの差で見学することができ、友人のSNSでの投稿に感謝です。
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