九州大分の佐伯鶴城高校の同窓会の案内が届き、6年振りに
参加することにした。
後輩で今年の「芥川賞」を受賞した小野正嗣さんの祝賀会も
兼ねていた。小説家としての真髄が何であったかを
知りたかった。
関東在住者での同窓会、なんと通常予定していた
人数の倍近く、160名が集まった。
私も参加した全員が、母校の後輩が成し遂げた偉業、
芥川賞を受賞した人物にお会いしたかったのです。
参加者は、どんな人物なのか、どのような青春時代
だったのか、自分が育った郷里を思い浮かべて
いたに違いない。
高校がある佐伯市は、大分県の南に位置し、リアス式海岸で、
多数の小さい入江があり、農水産物に恵まれた城下町です。
今回の芥川賞受賞作「九年前の祈り」の舞台は、
佐伯市の最南端の蒲江、小野正嗣さんの郷里
で展開される。
その描かれている風景は、私が過ごした高校時代
での初恋の想い出や勉学に疲れたときに、
癒してくれた海岸や浦の情景が目に浮かんで
重なり合います。
小野正嗣さんの受賞挨拶に驚きました。
「ネットの時代だからこそ、リアルでの出会いの大切さ」
を受賞後の実話で話をされました。
今回の高校同窓会の依頼を事務局から電話で受けた。
自分も大学の授業等で忙しいので、メールでのやりとり
でかまわないと済まそうとした。
事務局のしつこいまでの「リアル」にご挨拶をしたい
との申し出に応じた。
その後、彼自身の環境に大きな変化が数多く起こった。
先輩との交友関係、特にキャノンの会長兼社長の御手洗
さんとは同郷で、偶然の出会いで意気投合。
そして小野さんのお兄さん(昨年10月に亡くなりました)
の最後まで親切に病院で看護して頂いた先生が
高校の同窓会会長であったと、今回初めて知った
そうです。
最愛のお兄様の最後まで看取ってくれたことに
本当に感謝したそうです。
事務局とのリアルな出会いから広がった絆や
取り巻く人脈の連鎖が、最後には、
最愛の亡きお兄様の主治医が大先輩であった
と知りえた事実に、感動したそうです。
スマホ全盛の時代だからこそ、リアルにお会いして
交流を深めていくことの重要性を説いたお話でした。
素直に納得で、首を縦に振ってた自分がいました。
最後に、今回の受賞作「九年前の祈り」のテーマでもある
彼の言葉で言う「血縁と地縁が濃い土地」に
妙に惹かれてしまいます。
(P381掲載文を参照)
———-
「血縁と地縁が非常に濃いので、ひょっとすると、
そこにすみ続けている人やよそから来る人にとっては
ときに息苦しいこともあるかもしれない。
だけど、僕にとってはある種独特の、大切な場所です。」
———
この文章に自分自身の心の一部を垣間見た感じがしました。
定年後に参加した高校同窓会は、新たな自分の発見でした。
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