都会のオアシス、そこには「市中の山居」の世界があった!・・根津美術館にて

茶の湯のお稽古が終わった昼下がり、予約していた東京青山の根津美術館へ。庭園の燕子花(カキツバタ)が見頃で、青空が映し出された池に、群青色のカキツバタが咲き誇り思わず息をのんだ。



青山の街並みから徒歩で十数分、緑豊かな根津美術館があった。400年前の利休の時代に戻ったような静寂の中に、芽吹きの香りが漂う新緑の日本庭園があった。

庭園には数々の茶室があり、今見てきた特別展「燕子花図屛風の茶会」の展示の茶器や屏風の数々が蘇る。まるで「市中の山居」である。

日本庭園を散策して先ず飛び込んできたのが、燕子花が池の中に咲き誇った姿だった。

花菖蒲やアヤメは何度か見たことはあるが、群青色に染め、茎の緑と青い空を映した池がまるで絵画の様に目の前に現れた。


いつしか特別展「燕子花図屛風の茶会・昭和12年5月の茶会」で使われた国宝「燕子花図屛風」が蘇ってきた。

展示会場に入ると、尾形光琳(筆)燕子花(カキツバタ)の「群青」が強烈に飛び込んできた。

金箔と群青と緑青の世界がおりなす大傑作な屏風に圧倒され、暫し、その前に立ち止まった。

(ポストカードの画像を用いた)
同時に、「富士花図屏風(円山応挙 筆)」と「吉野図屏風」が展示され、その凄さに圧倒された。

財界人であり茶人であった初代根津嘉一郎(77歳)が、
昭和12年5月5日の「茶会」に実際に用いられた。

茶会に招かれた政財界の友人は、「亭主」嘉一郎の粋なサプライズに
驚嘆した顔が浮かんできます。

「燕子花図屛風」の燕子花の群青色と日本庭園に広がる絵のような燕子花(カキツバタ)の実像がマッチして、この感動が増幅していくのがなんとも心地いい。

茶事に使用された詳細は、会記に残されており、茶碗など数々の名品が惜しみなく茶事に使用された。

趣味として茶の湯を始めたが、数々の名品を観ることで茶の湯の奥の深さを改めて感じ取った。

初代根津嘉一郎は、実業家で、若い頃から古美術を好み、晩年は茶人として活躍した。

明治以降の美術品の海外流出を憂慮して、収集した美術品が現在の美術館の基礎となっている。

ふと現実に戻ると、政財界の方々の中に、嘉一郎のような気骨ある「茶人」がいるだろうか・・・

世界情勢は、ウクライナ危機や新型コロナウイルスで混迷を呈してる。
世界の中の日本の立ち位置をしっかり把握して、行動するリーダーが出てきて欲しいと思う。

ここに訪れる前に京都茶の湯ツアーがあり、茶の湯のゆかりのお寺や座禅を通して、「ご縁」を頂き、人としての「気付き」を得た。その気づきが根津美術館へ足がいつしか向いていた。

「青山緑水」(せいざんりょくすい)という禅語があります。

青い山、緑の水、雄大な自然の情景。天地森羅万象との融和したこの美術館の日本庭園で、
茶の湯に関する特別展「燕子花図屛風の茶会」を拝観し、

400年前の「市中の山居」の世界を楽しませていただいた「ご縁」に感謝です。

 

 

 

補足:アヤメ、花菖蒲、燕子花(カキツバタ)の違いを記述しておきます。
花びらの付け根を見れば一目瞭然。

  • あやめ・・・・・・・網目状
  • 菖蒲・・・・・・・・・黄色
  • 杜若(カキツバタ)・・・・・・・・・白い筋

この違いが分かると楽しくなります。