うすうす感じていた危機意識として、「地球温暖化」と「資本主義の限界」の二つがあった。温暖化対策として私が行っていることを考えてみた。レジ袋削減のためにエコバックを買い、車をハイブリッド車へ乗り換え、更に家電は省エネ対策したものを揃えてきた。一方、最近政府や企業がSDGsを行動指針を示し、広報活動が活発化してきた。こんな中、温暖化による気象大災害を切り口に「うすうす感じていた危機意識」について二つの本を読んでみた。
うすうす感じていた危機意識
1.最初に出会った本は、「人新世の資本論」(斎藤幸平著:集英社新書)である。
結論は以下であった。
温暖化による危機的状況は、資本主義の限界で、脱成長が必須であると説く。
「人新世」という環境危機の時代に、資本主義の限界がきているということ、そこで脱成長のコモン型社会に移行していくことが、むしろ豊かな社会に繋がっていくんだという風に感じてもらえればと思います。”(本文)
本書のはじめに。SDGsは、「大衆のアヘン」である。から始まる書き出しには驚いた。
即ち、「SDGsの方針をいくつかなぞれば、気候変動などの問題は解決可能だ」と、SDGsを免罪符のように思い込んでしまうことです。
”人類の経済活動が地球を破壊する「人新世(ひとしんせい)」=環境危機の時代。気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するためには、資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。いやこの、危機の解決策はある。ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた”
気候変動をストップさせる解決策は「脱成長コミュニズム」である。
資本主義を脱して、エネルギーや生産手段など生活に不可欠な〈コモン〉を自分たちで共同管理する「脱成長コミュニズム」に進まなければならない。”(本文)
この見解は、コロナ以前から少なからぬ人が感じてきた現代社会の危うさを明らかにして、特に気候変動に関しては、ミレニアル世代やZ世代といった「ジェネレーション・レフト」の若者たちが、変化の必要性への共感を広げている事実は、認めざるを得ない。
これも「うすうす感じていた危機意識」の一つで、資本主義の限界であった。
次に読んだ本、ビル・ゲイツの「温暖化による気候大災害は防げる」には、非常に興味をそそられた。
Ⅱ.温暖化による気候大災害は防げる。ビル・ゲイツ「地球の未来のため僕が決断したこと」(早川書房:山田文訳)
この本は、ビル・ゲイツ自身が、気候変動への効果的な対策を全世界に促すために書いた本です。
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツがなぜ気候変動についての本を書くのか?
ビル・ゲイツはゲイツ財団という団体を設立し、国際保健や教育に力を注いでいます。
そして、アフリカの貧困者に安く安定した、「クリーンなエネルギー」を提供するために気候変動を学んでおり、この本はその気候変動への対策の必要性を全世界に伝えるために書かれ興味深く、示唆に富んでいる本である。
要約
気候変動により引き起こされる暴風雨、洪水、旱魃、感染症の拡大によって、今世紀中に新型コロナウイルスの5倍の人命が失われると予想されている。それは、温室効果ガスを増やすことをやめなければ、気温は上がり続けることが問題である。
その原因となる年間510億トンの温室効果ガスの「ネットゼロ」を実現するために、マイクロソフトの共同創設者であるビル・ゲイツは、多様な分野の専門家と協力し、多くの取り組みを行ってきた。
その成果を生かして、「気候大災害」を防ぐために必要な科学技術や投資活動を解説した内容である。
温室効果ガスをゼロにする理由
気候変動について知っておくべき数字がふたつある。ひとつが510億。もうひとつがゼロだ。510億は毎年、世界の大気中に増える温室効果ガスのトン数である。年によって多少の増減はあるが、おおむね増加している。これが”現状”だ。(ビル・ゲイツ)
この510億は、温室効果ガスの年間排出量で、ゼロは、これから目指さなければならない数値である。この考え方は、温室効果のガス510億トンの何パーセントになるかがの判断基準となり重要だという。
「510億トン」⇒「ゼロ」は覚えておくと便利です。
温室効果ガスの出処
ビル・ゲイツは、「人間の活動プロセスの5つの領域」で、どれだけ温室効果ガスが排出されているかを分析し、理解する必要があるという。
「人の活動」によって排出される年間温室効果ガスの量(510億トンの内訳)
①ものをつくる(セメント、鋼鉄、プラスティック)31%
②電気を使う(電気) 27%
③ものを育てる(植物、動物) 19%
④移動する(飛行機、トラック、貨物船) 16%
⑤冷やしたる暖めたりする(暖房、冷房、冷蔵) 7%
非常にわかりやすく、全ての領域での温室効果ガスを「ゼロ」にする必要がある。
温暖化の科学的根拠
今年、2021年の秋行われた「地球温暖化対策を議論する国連の機構変動枠組み条約第26回締約国際会議(COP26)が英国で行われた。
国連の〈気候変動に関する政府間パネル〉(IPCC)の2021年8月の第6次評価報告書でも、地球が温暖化の原因が人間活動であることは「疑う余地はない」と初めて断定した。
この報告書のシナリオは、2030年以内に、産業革命前(1850年~1900年の平均)と比べて1.5度にたっするとの厳しい結果となった。但し各国が2050年頃にカーボンニュートラルを達成する最善のシナリオでは、今世紀後半から下降にてんじるとした。
日本政府も重い腰を上げ、2050年のカーボンニュートラルを宣言しました。2030年度までに温室効果ガスを13年度比46%削減することを目指し、行動を開始しました。
余談になりますが、90年に公表された第一次評価報告書は、今年ノーベル賞受賞した真鍋淑郎・米プリンストン大上席研究員(90)も執筆されている。
温暖化ガスの排出量「ゼロ」にするには、今と同じ値段にする
今大量に消費されてる化石燃料は、温暖化ガスを大量に排出し、「クリーンエネルギー」と比べ格段に安い。
従って、排出量をゼロにするためには、今のエネルギーとクリーンエネルギーの「価格差」をゼロにすればよい。即ち、この価格差を「グリーンプレミアム」と呼ぶ。
「グリーンプレミアム」は人の活動である「電気のもの」や「セメントのもの」等、5領域それぞれごとに異なる内容で対処する必要がある。
ビル・ゲイツは、排出量を「ゼロ」にするためには、グリーンプレミアムを念頭に置き、中所得層が払える安さになっているかを考えることが重要である。という。
温室効果ガスをゼロにするためのビル・ゲイツ提言
世界中のリーダーが集まって気候変動についての目標を受け入れ、ほぼすべての国が排出削減にとり組む約束を、COPー21(パリ協定)で合意したことは、大きな前進だと評価している。
ビル・ゲイツの提案は、「政府のリーダーと政府立案者」に焦点を合わせて提言しています。
その手法は、排出量ゼロを達成するためにイノベーションの供給と需要に着目している。
①イノベーションの供給を拡大すること
②イノベーションの需要に弾みをつけること
①イノベーションの供給を増やすために、政府に以下の提言を行います。
・今後10年で、クリーンエネルギーと気候関係の研究開発予算を5倍にする。
・高リスク高リターンの研究開発プロジェクトに、より多くの資金を投じる。
・研究開発を最大のニーズにマッチさせる。
・はじめから産業界と協働する。②イノベーションの需要に弾みをつけること
①エネルギーのスタートアップを支援するために、各国政府は購買力を行使する。
②コストを下げてリスクを減らすインセンティブをつくる。
③新技術を市場に送るインフラをつくる。
④新技術が他と競合できるようにルールを変える。・イノベーションを展開・普及させるためには、
①炭素に値段をつけるカーボン・プライシング。(誰もが自分の排出コストを支払うようにする)
②クリーン電力基準(電力会社に一定の割合で再生エネルギーを使用させる)
③クリーン燃料基準
④クリーン製品基準
⑤古いものを追い出す。
ビル・ゲイツの提案を各国はどう実践していくか?
すべての国の政府は以下の3つのことを実践する必要があります。
1、ゼロの達成を目標にする。
富裕国は2050年まで、中所得国は2050年以降の可能なかぎり早い時期に達成することを目指す。
2、目標を達成するための具体的な計画を策定。
2050年までにゼロを達成するには、2030年までに政策と市場構造が整える必要がある。3、研究に資金提供する立場にある国はすべて、研究がクリーン・エネルギー価格の大幅な引き下げに確実につながるようにしなければならない。
グリーン・プレミアムを大幅に下げて、中所得国が排出ゼロを実現できるようにすべきです。
ビル・ゲイツは、「グリーン・プレミアム」下げることが最も重要だと言う。
中・低所得国が排出を削減し、最終的に「ゼロ」にするのを助ける唯一の方法であり、それを実行に移すには、豊かな国、とりわけアメリカ、日本、ヨーロッパ諸国が先導しなければならない。
過去、テクノロジー分野で初期の投資が、インターネットとマイクロチップを生み、それがパソコン革命に拍車をかけたように、クリーンエネルギーにもイノベーションのブレークスルーを実現することは難しいが、チャンスはある。
日本もこの分野での成長戦略に掲げる、実行することで技術立国日本の復活も垣間見れる。政治の世界は、見当がつかない。
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