人生初の茶事・初釜にチャレンジ

お茶を習い始めて3ヶ月、風炉と炉の
作法の違いもわからない状態で、初釜
の案内状が届いた。
不安とワクワク感の交錯する中、参加
する旨のお返事を書いた。



(煙草盆 伊勢神宮の古材)

茶の湯との出会いは、母の遺品の中
に、お茶道具、お茶を教えている母
の写真が沢山出てきたことから始まった。

そこには、私の知らない生き生きと
した茶の湯に打ち込む母の姿があり、
その世界を知りたくなった。

その時期に、ビジネス茶道の存在を
知り月1回でしたが、異業種の方々
との交流もでき、楽しむことができた。

茶の湯の奥深さを求めて、茶瞳庵に入
門した。古希を過ぎたおじさんがなぜ?
と言われようが、お稽古が楽しく通っている。

初釜の話に戻します。

快晴に恵まれた朝、茶室に着いた。
全てが初めて尽くしで、和服姿でお
伺いした。

茶室はいつもと違い、朝陽が優しく
差し込みいつもと違う澄みきった空気
が漂っていた。

寄付(よりつき)に通され、身支度を
整えた。

そのとき、風呂敷を持参するように
注意書きの意味がやっとわかった。(笑)

腰掛待合迎え付けと続く作法の後、
つくばいで手と口を清めた。

初座の席入り

お軸は、先生が一番大事にしている
掛物で、拝見したとき、その気持ちが
伝わってきたことを直感的に覚えている。

掛物:利休書状五島美術館複製
利休 が亡くなる数週間前に
大切な橋立茶壺を信頼するあなたに
預けたいという内容の手紙です。
利休と秀吉との難しい時代背景が読み
とれるお軸であったと、後で先生から
お話を聞き、しみじみと回想できた。

花:結び柳と椿
床の間の柱には、青竹に結び柳がしな
やかにたれ下がり、椿の花が添えられ
ていた。

床の間の中央には、金色の米俵が白木
の台に置かれ、初釜の雰囲気を醸し出
していた。

炭点前と香合の拝見

お茶のために熾した火でお湯を沸かし
茶を点てる炭点前

作法は難しいが、理にかなってると
感じた。

主客が火を囲んで皆が集まり、一体感
を醸し出し、互いの距離を縮める
雰囲気になりました。

炭を使うことの無い日常ですが、
幼少の頃、火鉢で炭に火をおこしたこ
とが頭の中を過った。

香合の拝見。
今年の干支、子 初釜に相応しい。
炉の四隅に香を入れ茶室に香がほのか
に漂っていい気分になった。

懐石濃茶をベストコンディションで飲んで頂くことが主眼)

懐石料理は前に紹介したビジネス茶道
の特別編でいただいた事はあった。

初釜の懐石は一味違い、緊張感の中、
美味しくいただいた。

最初に折敷(おしき)が出され、
向付け(むこうづけ)は、汁物と
同時に登場する一汁三菜の「一菜目」
にあたる料理が出された。

汁、煮物、焼き物そして強肴(しいざかな)

小吸物、八寸をお酒と共にいただき
楽しい雰囲気が座を和ませてくれました。

締めは、湯桶(ゆとう)、香の物。

お酒を戴きながら皆の気分が高揚し、
釜の湯もいい感じに滾ってきた。

食事の終了の合図は客が一斉に箸を
落とす。これは、圧巻でした。


最後に主菓子(おもがし)亀屋万年堂
常盤饅頭(ときわまんじゅう)を
いただいた後、退席し茶事の前段階が
終了となる。

既に2時間は経過して、足の痺れも
ピークに達した頃、「中立ち」
休憩に入った。



(花入:伊賀 尺八 谷本洋作)(茶入 備前 肩衛)(仕服 二重曼花鳥文)
(茶杓:峰の松風 大徳寺紹春寺 積應和尚による銘 宗林作)

後座(ござ)の席入り前に、床の間の
掛物も命のある物へ一変させ雰囲気が
変ります。

後座の始まりの合図、銅羅(どら)が
鳴り、後座(ござ)の席入り、濃茶、
薄茶と茶事の後半が始まりました。


茶碗 鳥台

お濃茶を美味しく飲むために
懐石料理を食べ、
炭点前での熾した火でお湯加減をみて
初釜のクライマックスの場になった。

お点前に全員が集中し、「お正客」か
らいただき、順々に茶碗がまわってくる。

濃茶のトロッとした旨みが口の中で
ただよい、緊張感と皆の一体感が
心地良い。

茶人・千宗屋氏(武者小路千家)は
濃茶について語ってます。

茶 利休と今をつなぐ(千宗屋著新潮新書)

茶事とは、人間が生来持っている「他者と一体になりたい」という
困難な願望を成就させるための、非常によく考えられたシステムなのです。

初心者の私には、まだ理解できません
が、お濃茶に秘められた心は、少し
垣間見れた感じがします。

少し気分を変えて薄茶が始まりました。

菓子  干支煎餅 羽子板
子年に合わせた煎餅美味しかったです。

薄茶のお点前は、入門して日が浅い方
が見事にこなし、私も来年は薄茶の
お点前が出来るよう、精進しようと
思った次第です。

初釜の最後に「福引き」が行われた。
小さく折りたたまれた紙のくじを
皆さんで引き、何と当たってしまい
ました。

今年は、年男、良いことがありそうだ!

以上、初心者のおじさんが、初釜に
チャレンジした様子です。

茶の湯そのものが、現代生活では
「非日常」となりました。

その中で見て、聞いて、触って、嗅い
で、味わっての五感を研ぎ澄まされる
ことを実感した茶事でした。

和服で銀座から茶室へ電車を乗り継い
できましたが、男性の和服姿も
「非日常」。その良さも改めて感じま
した。

このブログも初釜に参加された方々の
ご指導のもと、試行錯誤しながら
備忘録として書きました。

ご協力に感謝です。

最後にこれからも精進するための文章を掲載します。
茶 利休と今をつなぐ(千宗屋著新潮新書)

茶の湯の究極的な目的は、直心の交わりつまり心と心の交わりを、茶の湯の方法論によって実現することです。
その最善の手段として茶事があり、亭主としては茶事を催し、考え抜いた趣向によってお客様に満足してもらい、そのことで自分も「人を招く悦び」を享受する。
客としては修練と教養を積んで、亭主のもてなしを察し、的確に応じることができる。
そのとき、主客の間に成立する人間的で、深いコミュニケーションが、双方にとって何よりの喜び、楽しみとなるのです。

ここまで読んで頂き有難うございます。

 

 

 

 

 

 

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