最近「記憶力」、「集中力」が無くなったと感じることあり、歳のせいかと団塊世代のおじさんは思っていた。本屋でスエーデンの精神科医、アンデッシュ・ハンセン氏が著した「スマホ脳」(新潮新書)に出会うまでは!・・最新研究が示す恐るべき真実、
”人間の脳は、デジタル社会に適応していない”(著書本文)
その著書の内容は、スマホが記憶力や集中力、学力を低下させて、睡眠障害やうつ病をもたらすことを多くの研究成果を挙げて紹介している。
私が注目したのは、「スマホが記憶力や集中力を低下させている」点である。
スマートフォン(スマホ/iPhone)が日本上陸したのが2008年、その後スマホの虜になった。
スマホのアプリである、facebook、Google+、Twitter、Instagaram、YouTubeと学んできた。(Google+はその後廃止)又、毎日上記SNSへ投稿を繰り返している。
“現在、大人は1日に4時間スマホに費やしている。10代の若者なら4~5時間。この10年に起きた行動様式の変化は、人類史上最速のものだ。それにはどんな影響があるのだろうか。本書「スマホ脳」では、その点を突き詰めたかった。そして私は、科学の力に頼ろうと決めた。”(本文)
私自身のスマホスクリーンタイム(スマホに費やしてる時間)4時間、該当してる。
スマホが世に出て、僅か10年余り、人間に影響を及ぼすことがあるんだろうか?
スマホが人間に大きく影響を及ぼす理由
スエーデンの精神科医、アンデッシュ・ハンセン氏は、「人間の脳が数万年前からかわってないからだ」と言う。
人間は狩猟と採集をして暮らしてきた。そして私たちの脳は、今でも当時の生活様式に最適化されている。即ち、
狩猟採集生活の中で、生き延びるために培ってきた特性がある。
①脳は、新しい情報を得るとドーパミンの報酬システムが働く。且つ不確かな結果への 偏愛する報酬システムを備えている。
②ネガティブな感情にはすぐ反応する。
③集中力を持続させることも苦手である。
以上の脳の特性をSNS運営企業のFacebook、Instagram等が利用しているのだと言う。
スマホが脳をハッキングするタイミング
具体的には、フェイスブック、インスタグラムが、スマホを手に取らせ、何か大事な更新がないか。
「いいね」がついていないか確かめたいという「新しい情報」への欲求を起こさせる。なるほど!思い当たりますね。
SNSの開発者は、人間の報酬システムを詳しく研究し、時間を問わずスマホを手に取りたくなるような驚きの瞬間を理解した上で開発している。
そのアプリが、極力効果的に脳の報酬システムを直撃しドーパミンを出して、最大限の依存性を実現している。
金儲けという意味では、SNS企業は、
私たちの脳のハッキングに成功したのは間違いない。(著者は語る)
フェイスブックの「いいね」の機能を開発した人、ローゼンスタイン氏は、「それが思ってもみない悪影響があると後悔している」と発言している。
なぜ、IT企業のトップは子供にスマホを与えないか。
「脳がスマホにハッキングされる」というリスクを避けるため、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツは、子供たちのスマホ、iPadの使用を厳しく制限していました。
特にビル・ゲイツは、子供が14歳になるまで、スマホは持たせなかった。
脳がスマホにハッキング(スマホを持っていること)されることにより、記憶力、集中力が低下することをIT企業のトップマネジメントは知り尽くしていた実例です。
以上、私たちの脳は、スマホにハッキングされ、常にスマホを手放せなくなり、アプリ企業の広告の犠牲になった。且つ、私たちからたくさんの時間を奪ってしまった。
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②スマホは、睡眠障害やうつ病をもたらすこと
この著書のもう一つ課題について考えることとしよう。
スマホが世に出て10年余り、大人は一日平均4時間、10代の若者の2割は、7時間スマホに費やしている。
このためにハンセン氏は、睡眠や運動、コミュニケーションに割く時間が減り、睡眠障害やうつが顕著に増えたと述べている。
その理由は、人間の脳は、狩猟と採取をして暮らしていた数万年前の時代から変化していない。
(人間の進化の見地)即ち、「人間には睡眠や運動、お互いへの強い欲求の必要性が備わっている」と語る。
「こうした欲求を無視し続けると、精神状態が悪くなる」と指摘する。
”例えば、スエーデンでは、眠れなくて受診する若者の数が2000年頃と比べて8倍にもなった。・・・睡眠、運動、そして他者との関わりが、精神的な不調から身を守る3つの重要な要素だ。それは研究でもはっきり示されている。”
自動車や電気やスマホのある豊かな現代社生活が快適になった今でも、精神状態が悪くなる理由が理解できた。
教育現場へのデジタルツールの導入(幼児にタブレット学習は向かない)
“うちでは、子供たちがデジタル機器使う時間を制限している。スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)”
スマホには、人間の脳の報酬系を活性化させて注目を引くというとてつもない力がある。半面、衝動にブレーキをかける脳内の領域がある。子供や若者のうちは、未発達である。それがスマホを魅惑的なものにしてしまうとハンセン氏は指摘する。
最近の幼児教育の専門家は、「幼児の脳の発達にタブレットは向かない。」と警鐘を鳴らしている。
日本でも教育現場にデジタルツールの導入が検討されている。
ここでも、科学的な検証を参照にしながら慎重な判断をすべきだと述べている。
例えば、カロリンスカ大学附属病院小児科のラーゲルクランツ教授は、タブレット端末は、子供の脳の発達に障害を与えると警鐘を鳴らしている。
”まだ書くことを習得していない場合は、ペンを使って練習することで文字を覚えていく。就学前の子供を対象にした研究では、手で、つまり紙とペンで書くという運動能力が、文字を読む能力とも深く関わっている。(本文)
以上、ハンセン氏は、「デジタルより紙の方がじっくり読むことができ、文字を読む能力向上に役立つ」とみている。
興味ある研究事例100件以上の一つを紹介しよう。
”教室からスマホを追放したら、どうなるか?”生徒たちは朝スマホを預け、学校が終わると返してもらう。
結果、成績が上がった。
ストレス解消策は運動だ
”多くの人がストレスを受け、集中できず、デジタルな情報の洪水に溺れそうになっている今、運動はスマートな対抗策だ。最善の方法よ言ってもいいかもしれない。”(本文)
デジタル時代のアドバイス
・スマホを利用時間を知り、制限しよう。
・プッシュ通知を全てオフにしよう。
・人と会っているとき、スマホはオフにする。
・教室でのスマホは禁止
・運動と睡眠をとる
・SNSは、積極的に交流したい人だけフォローする
最後に、私が記憶力、集中力がなくなり、ストレスを感じるのは、歳のせいだけではなく、本書「スマホ脳」が明快に答えを与えてくれました。
デジタル時代に生きる我々は、スマホのインフラのメリットだけを享受するだけでなく、本書で示唆してくれた「人間の進化の見地」(人間の脳は、数万年前の脳を持っている)に関心を持つことで、より健康で健全な自分を取り戻したい。
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ここまで読んでいただき有難うございます。
半世紀前の物語「モモ」から見えてきた!・・・今のコロナの世界
新型コロナウイルスの感染拡大が続き
テレワークによる在宅勤務が始まった。
先日の「ビジネス茶道」の終わりに、
先生から1冊の本を頂き読んでみた。
ミヒャエル・エンデ作「モモ」
(岩波少年文庫)を児童向けの物語
かと思ったが、今の世界を読み解く
事ができる奥深い、大人向けの内容
であった。
時間泥棒と、盗まれた時間
を人間に取り返した女の子の物語です。人間本来の生き方を忘れて
しまっている現代の人々に
〈時間〉の真の意味を問う。
私も「時間がない」「暇がない」と
毎日過ごしてきました。時間とは
何かを考えさせられました。
【あらすじ】
主人公のモモは、年齢不詳の浮浪児ですが
現代の文明社会で管理された人間ではなく
自然のままの不思議な能力をもった人間です。モモを取り巻く環境である現代人は、
良い暮らしのために必死に時間を節約し
追い立てられるように生活してます。子供達も遊びを忘れ、「将来にためになる」
勉強を強要されてます。モモの上記のような取り巻く環境は、
「灰色の男たち」という病菌に侵され始め
ます。この病菌・「灰色の男たち」は、人々から
時間を奪い、人間として「生きること」
を奪い、心の中は貧しく荒廃していきます。モモは異次元の世界の時間を司るマイスター・ホラに
時間の意味を教えられ、一人一人の
人間に与えられる時間の豊かさ、美しさを
知ります。そして、モモは、時間泥棒の「灰色の男たち」
から時間を取り戻し、人々は豊かな時間を取り戻し
心豊かな生活が戻ってきます。
現実の社会では、「働き方改革」とい
う名目で労働時間は短縮されたが、
本当に人間として生き生きとした
時間を取り戻したのでしょうか・・・
自分の時間とは!
を考えるとき、
・他人(地域活性化)のために使う時間、
・自分のために使う時間、
があります。その判断基準は、
自分の心が安らかになり、人間本来の
生きる喜びを感じる時間だからです。
を忘れ、自分との対話する静寂の時間
や空間が、五感と教養を深め、「人間力」と「直観力」を鍛えられる
と感じてます。
【「モモ」が教えてくれる本当のこと】
冒頭にも書きましたが、新型コロナウ
イルスの感染拡大が世界中に拡散し、
終息の兆しが見えません。
「モモ」に登場する「灰色の男たち」という病菌
を「コロナウイルス」と置き換えると
世の中が見えてきます。
「灰色の男たち」は、日常生活をして
いる人々から時間を奪い、
人間として「生きること」
を奪い、心の中は貧しく荒廃させて
きました。
現在の世の中や、私たちの生活は、
こころ豊かになったんでしょうか・・・
このコロナウイルス(「灰色の男たち」)の出現は、
今までの、私たちが住む世界の仕組
みや人間としての生き方を変えろ
と警告し、
自然と共生することを求めている
ように思えます。
「もも」の作者は、あとがきで、
この物語は、過去の話でもあり、
未来の話でもよかったと語ってます。
(ミヒャエル・エンデ 本人の挿絵
この物語は半世紀前(1973年)に
書かれましたが、彼の言う「未来」、
すなわち、
「今でも」我々に「人の生き方」や
現在の世の中の仕組みを見直せ!
と、強烈なメッセージを与えてくれます。
団塊世代の私は、青春時代から社会人
になった頃は、日本の高度経済成長と
共に残業は当たり前で、時には徹夜の
仕事もやりました。
又、仕事の効率化のために、システム
化にも没頭する時代を過ごしてきまし
た。
そこには、一個人としての幸せや
生き方を考える時間がありませんで
した。
まさに「モモ」に出てくる時間泥棒に
時間を盗まれたベッポやジジのような
時代でした。
では、どうすれば良いのでしょうか?
直近の新聞で解剖学者である養老孟司
氏はの「生き方を見直せ」と
インタビューに答えてます。
”敵だから潰せという話になると、外出できず、人とも会えず、経済は止まる。しかも、いくら人工的に安全な環境をつくっても、自然は多様で絶えず変化するから、頭で考えたシステムでなんとかなると思わないほうがいい。”
又、「サピエンス全史」のハラリ氏は
グローバルに結束が重要だと警告を
新聞記事に投稿してます。
我々は目の前には、自国を優先し各国との協力を拒む道を歩むのか、グローバルに結束していくのかという2つの選択肢がある。前者を選べば危機は長期化し、将来さらに恐ろしい悲劇が待つことになるだろう。後者を選べば新型コロナに勝利するだけでなく、21世紀に人類を襲うであろう様々な病気の大流行や危機にも勝利することができる。
変えることを訴えてるようです。以上、半世紀前の物語「モモ」から
学んだことでした。良い本です。
新型コロナウィルスの感染拡大が
1日も早く収束することを願いつつ
ペンを置きます。
ここまで読んでいただき有難うございます。